中東かわら版

№60 アルジェリア:治安・軍幹部の人事交代

 9月19、20日、アルジェリア国防省は、16日付の大統領令で新たな空軍総司令官と陸軍総司令官を任命したことを発表した。すでに8月末に現地メディアが人事交代を報じていたが、これが公式に発表されたことになる。最近になり軍・警察幹部の人事交代が続いているため、以下に主要な事例を記した。

公表日

ポスト

新任

退任

6月26日

国家治安総局長官

(DGSN)

ムスタファー・ラフビリー

アブドゥルガニー・ハーミル

7月4日

国家憲兵隊司令官

ガーリー・ベルカシール

マナード・ヌーバ

8月16日

第1軍管区司令官

アリー・シダーン

ハビーブ・シェントゥーフ

 

第2軍管区司令官

ムフターブ・スアーブ

サイード・ベイ

 

第4軍管区司令官

アラーイミーヤ・ハッサーン

アブドゥルラッザーク・シャリーフ

 

第6軍管区司令官

ムハンマド・アジュルード

ムフターブ・スアーブ

9月19日

空軍総司令官

ハミード・ブーマイーザ

アブドゥルカーディル・ルニス

20日

陸軍総司令官

サイード・シャングリーハ

アフシン・ターフィル

 

評価

 治安機構の組織改編や幹部人事交代は最近に始まったことではなく、ブーテフリカ大統領4期目に入る前の2013年頃から始まっている。アルジェリア政治の権力中枢(le pouvoir)をめぐる軍と大統領の対立は、大統領による軍組織改編や人事異動を引き起こしてきた。2013年以来脳梗塞を患うブーテフリカ大統領(現在81歳)の執務能力が疑問視されている現在、ポスト・ブーテフリカ体制の形成に向けて、誰が権力中枢をコントロールするのかという問題が注目されている。

 最近の一連の治安機構幹部人事は、ポスト・ブーテフリカ体制の形成に向けた動きともとれるだろう。与党・民族解放戦線(FLN)や民主国民連合(RND)などは、2019年4月に予定されている大統領選挙にブーテフリカ大統領の立候補を支持しているが、大統領自身は公の場にほとんど現れず、言葉を発する様子も公開されていない。体制の安定のために健康状態の悪い大統領を支持しつつも、これら大統領支持派は「次の時代」を模索しているはずである。そこで重要となるのが、大統領支持派が権力中枢の中心にいる軍をコントロールすることであろう。上記の軍人事を指揮したと考えられるアフマド・ガーイド・サーリフ副国防相兼参謀総長は大統領支持派とされている。また国防相はブーテフリカ大統領が兼任しているが、執務能力不明のため、ガーイド・サーリフが軍の事実上のナンバー・ワンとされる。今後、大統領選挙に向けての期間、またブーテフリカ5期目に入った場合でも、与党、サーリフ副国防相兼参謀総長、その他軍内部の動きはポスト・ブーテフリカ体制の性質を見極める重要な要素となるだろう。

(研究員 金谷 美紗)

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