中東かわら版

№90 カタル:OPEC脱退を表明

 2018年12月3日、カアビー・エネルギー相は、同国が2019年1月に石油輸出国機構(OPEC)から脱退すると表明した。同エネルギー相は、記者会見で要旨以下の通り述べた。

 

  • 2019年1月にOPECを脱退することを決定し、その旨OPECに伝えた。
  •  57年間OPECに加盟していたカタルにとって、脱退の決定は容易ではなかった。しかし、カタルの脱退によるOPECの石油生産量への影響は小さい。
  • カタルは、自らの国際的役割を強化するための方策を再検討している。また、ガス産業に焦点を当てた戦略を含め、長期的な戦略を策定している。
  •  今般の決定と、2017年以来のカタルに対する政治・経済的ボイコット(注:サウジ、UAE、バハレーン、エジプトとの断交)とは無関係である。

 

評価

 カタルの原油生産量は日量60万バーレルに過ぎず、同国の動向がOPECの石油生産量に与える影響が小さいことは事実である。一方、カタルは世界最大の液化天然ガス(LNG)の輸出国であり、年間のLNG生産量を7700万トンから1億1000万トンへと増強しようとしている。しかし、カタルがLNGの開発により注力することと同国がOPECに加盟したり脱退したりすることとの関係は不明である。

 カタルでは11月に内閣改造が行われ(『中東かわら版』2018年No.79)、カアビー・エネルギー相もその際に入閣した。また、内閣改造に伴いカタル石油の経営評議会も改組され、アブドッラー副首長が議長に、カアビー・エネルギー相が副議長に任命された。この内閣改造は天然資源分野・投資分野に焦点を当てた人事と思われる。今般の決定の意図や今後の動向を観察する上では、カタル自身がいつ、どのような形で長期的な戦略を具体化するかが重要となるだろう。

(主席研究員 髙岡 豊)

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