中東かわら版

№3 サウジアラビア:新型コロナウイルス対策事情(石油減産の動き)

 2020年4月9日、サウジの要請に基づいてOPECプラス会合(テレビ会議)が開催され、サウジとロシアが5〜6月に日量1000万バーレル(bpd)での石油減産に取り組むことで合意した。その後、7月以降は800万bpd、2021年1月〜2022年4月は600万bpdと減産を続ける方針が確認された。次回会合は6月に開催予定。

 

評価

 3月5〜6日に開催されたOPECプラス会合でのロシアの協調減産拒否、その後のサウジによる大幅増産は、世界市場での原油価格急落の誘因となった(『中東かわら版』2019年度No.194『中東トピックス』2020年3月号を参照)。今次会合においてサウジが協調減産のイニシアチブをとった背景には、次の点が考えられる。

 

1. 経済低迷の「悪役」回避

世界におけるCOVID-19拡大が深刻化して以降、サウジとロシアは原油価格急落の責任を相互に押し付けあう主張を続けてきた。サウジとしては、経済低迷の打開に貢献しない「悪役」と見なさされる事態を避けたかったと思われる。 

 

2. 米国との関係悪化防止

ロシアの主張の内、サウジ側は特に、サウジがシェールオイル市場を拡大する米国を妨害するために石油増産に踏み切ったとする見方を強く否定している。サウジとしては、米国との競合関係を過度に煽られる事態を避けたいとの思惑があっただろう。

 

3. 自国経済への影響懸念

サウジのCOVID-19新規感染者は4月9日に一日最大となる355名(累計3287名)を記録した。昨年9月の観光査証発給開始により新たな収入源として期待された観光産業は、現在の出入国および各都市間往来の禁止措置により望むべくもなく、今後の自国経済への影響は決して少なくないと思われる。 

 

 以上のように今次会合は、COVID-19拡大という特殊な状況下ではあるが、サウジが基幹産業(石油)への依存から脱することは容易ではないことを浮かび上がらせたと言えよう。

(研究員 高尾 賢一郎)

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