中東かわら版

№25 オマーン:イランとのガス田開発に向けた首脳会談

 2022年5月23日、ハイサム国王はイランのライーシー大統領とマスカットで会談した。ライーシー大統領はアブドゥルラヒヤーン外相、アーシュティヤーニー国防・軍需相、アミーン工業・鉱業・商業相他、多数の閣僚らとともにオマーンを訪れた。

 会談では、二国間の貿易促進を含めた政治・経済関係の強化や、イラン核合意(JCPOA)交渉に関するオマーンの米・イラン間の仲介的役割について協議がなされた。その後、両国石油省との間で海底油田(イラン名:ヘンガーム、オマーン名:西ブハー)における共同ガス開発に関する合意が交わされた。ヘンガーム/西ブハー油田は、両国が2005年に共同開発にかかわるMoUを締結したものの進展が見られず、2012年にイランが単独での開発に着手していたものであり、今次合意によって、改めて共同開発が進むことが期待される。

 なおライーシー大統領のGCC諸国訪問は、2022年2月のカタル(タミーム首長)訪問以来2度目となる。また、今次滞在中、同大統領はオマーン人ビジネスパーソンらとの会合にも参加し、両国間の円滑なビジネス実施に向けて協力する姿勢を示した。

 

評価

 今次のオマーン・イラン首脳会談はハイサム国王(オマーン側)の招待を受けて実現したとされる。実際、天然ガスの輸入に向けた油/ガス田の共同開発にかかわる合意はオマーン側のメリットとして注目を集め、オマーンは海底パイプラインを建設してガス輸入を計画することを発表した。

 一方のイラン側も、膠着状態にあるJCPOAの仲介的役割への期待をオマーンに寄せるなどしたが、実際にオマーンが米・イランの仲介役となって、JCPOA交渉が突如として進展を見せるとは考えづらい。むしろイラン側には、一部で報じられるように、上述の油/ガス田開発を中心とした貿易、医療、観光等、経済分野での具体的な成果を(MoU等)を挙げたいとの思惑があったと考えられる。JCPOAに加え、昨年以来のサウジとのイエメン情勢を中心とした協議も大きな進展が見られない中、カタルやオマーンといった関係強化が可能な国々とのつながりがイランにとって一層重要になっている。

(研究員 高尾 賢一郎)

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