中東かわら版

№32 チュニジア:ナフダ党が国民投票と議会選挙をボイコットへ

 2022年6月5日、ナフダ党のガンヌーシー党首はスファックスで開催されたナフダ結成41周年の会合で、7月の国民投票と12月の議会選挙をボイコットすることを発表した。サイード大統領が進める政治行程では、7月25日に改憲の是非を問う国民投票が行われ、12月17日に新議会の樹立に向けた議会選挙が実施される計画である。一方のナフダ党は、大統領による議会の解散や2014年憲法の停止をクーデタとして表現し、現行の政治改革を批判している。また、5月31日には他政党や市民団体と反大統領連合「救国戦線」を結成し、大統領の取り組みを阻止しようと試みている。

 こうした中、独立最高選挙機構(ISIE)は6月8日、国民投票に係る日程を発表した(表)。7月25日の国民投票の暫定結果は遅くとも28日までに公表される見通しである。

 

表 国民投票の日程

7月3~23日

国民投票キャンペーンの実施

7月13日

有権者の最終リストの発表

7月25日

(23~25日)

国民投票の実施

(在外チュニジア人の投票期間)

7月28日まで

暫定結果の発表

7月30日~

8月27日

異議申し立ての審査期間

8月28日

最終結果の発表

                           (出所)国営通信「TAP」をもとに筆者作成。

  

評価

 現在、ナフダ党をはじめ、大半の政党がサイード大統領と敵対しており、また政治に影響力を持つチュニジア労働者総同盟(UGTT)もゼネスト実施を予告し、大統領との対決姿勢を強めている。そして、国民の多くが急速な物価上昇に不満を募らせており、有効な対応策を打ち出せないサイード大統領に不満の矛先が向かっている。こうした状況下、サイード大統領は大統領主導の政治体制の構築という自らの政治的目標のためだけに、政治改革を進めている。

 今後の注目点は、憲法改正草案の内容である。現時点で未発表であるが、草案作成を担当する法律家サードゥーク・ベライード氏によると、憲法からイスラームという文言が全て削除され、世俗色の強いものになる可能性がある。この背景には、2011年革命以後、チュニジア政治の中心にいるイスラーム主義政党・ナフダ党を更に抑えこむ狙いがあると考えられる。政教分離を厳格化することで、ナフダ党の非合法化、それに伴う関連団体の活動禁止が想定されるため、改憲が実現すれば、ナフダ党はより窮地に追い込まれるだろう。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「チュニジア:労組が6月16日にゼネスト実施を予告」No.27(2022年6月1日)

 

(研究員 高橋 雅英)

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