中東かわら版

№127 サウジアラビア:習近平中国国家主席の訪問 #1

 2022年12月7日、リヤドで9日に開催されるアラブ・中国サミット出席のため、中国の習近平国家主席がサウジに到着し、7~8日をサウジ・中国関係の協議にあてた。

 習国家主席は8日、サルマーン国王及びムハンマド皇太子と会談し、あらゆる分野での二国間の関係強化につき確認し、包括的戦略パートナーシップに合意した。これに先立つ7日夜、両国の機関・企業間で34の投資合意が交わされた。分野は、グリーン・エネルギー、グリーン水素、太陽光発電、情報技術、クラウド・サービス、交通、物流、医療産業、住宅、建設業等である。サウジからはKAUST(アブドッラー国王科学技術大学)、国立植被促進・砂漠化防止センター、中国からは通信大手ファーウェイ、シノべーション・べンチャーズ、エリオン・エネルギー(億利)等、多数の機関・企業がこの合意に加わった。

 

評価

 習国家主席のリヤド到着から滞在中の各種会談まで、サウジ国内のメディアは間を置かずにその動向を伝えている。その歓迎ぶりは、7月のバイデン米大統領のジェッダ訪問時を明らかに上回る、熱烈なものである。この背景には、投資合意といった具体的な成果があることは確かだが、それ以上に、サウジが中国との関係を重視しているとの認識を今、内外に向けて示すことの重要性がある。

 一つは、サウジにとって中国が、輸出全体の約20%を占める最大の貿易相手であり、特に輸出の約57%を占める原油の最大の供給先(26%)だとの事実である。2021年の二国間の貿易総額は3,040億リヤル(約8,110億ドル)、直近2022年第3四半期の貿易総額は1,030億リヤル(2,747億ドル)とされる。ゼロ・コロナ政策の緩和を発表し、今後、石油需要の回復が見込まれる中国は、サウジにとって一層重要な経済パートナーと位置づけられる。

 もう一つはサウジと米国、とりわけバイデン現政権との関係が低調な中、その間隙を縫うように中国がサウジへのアプローチを強め、サウジもそれに応えていることである。ただし、上記の経済的結びつき等から考えても、中国は単なる対米関係におけるカウンター・バランスにとどまる存在ではない。サウジからすれば、10月の全人代を経て権力基盤の一層の強化を図った習近平国家主席は、バイデン米大統領よりも「息の長い」パートナーとなる可能性が高い。サウジにとって、中国との関係強化は既に米国を意識した観測気球の域を超えている。

 

【参考】

「UAE:「一つの中国」原則への支持表明と米国へのけん制」『中東かわら版』No.72

【特集:中国の中東進出】『中東研究』第537号、2020年1月

(研究員 高尾 賢一郎)

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