中東かわら版

№77 モロッコ:中部で地震発生、支援国の受け入れ

 2023年9月8日午後11時、中部マラケシュの南西約75kmに位置する町ウカイムデン(Oukaimden)を震源とするマグニチュード6.8の地震が発生した。モロッコ国営通信(MAP)によると、現地10日の午後7時時点で2122人が死亡、2421人が負傷した。世界保健機関(WHO)によると、被災者数は30万人以上にのぼる見通しである。また今次地震により、4人のフランス人が死亡するなど外国人の犠牲者も確認された。

 同地震を受け、モロッコ政府は、被災現場であらゆる支援を被災者に提供するとともに、被災者の救助に向け、医師1000人、看護師1500人以上を派遣した。またモロッコ王立軍(FAR)も、捜索・救助専門部隊の派遣や被災地への支援物資の運搬、野戦病院の設置を目的に展開した。さらにモロッコ政府は、アラブ首長国連邦(UAE)、イギリス、カタル、スペインの計4カ国からの捜索救助隊派遣の申し出を受け入れる方針も発表した。

 

評価 

 モロッコでの地震は稀であるものの、1960年には南西部アガディールでマグニチュード5.8相当の地震が発生し、1万2000~5000人が死亡した例もある。今般の中部地震で大きく被害を受けたのは、小さな農村部の自治体であり、山岳地形のために救助隊が被災現地に到着するのに時間を要している。またマグニチュード4程度の余震も起きていることも、救援活動の円滑な実行に少なからず支障となっている。

 こうした状況下、モロッコ政府は現時点で、UAE・イギリス・カタル・スペインの4カ国からの支援受け入れを決定した。UAE・カタルはアラブ君主制国家間の繋がりにより、モロッコと友好関係にあるとともに、投資面での結びつきも強い。また、イギリス・スペインとも王室外交を軸に良好な関係にある点などを考慮し、モロッコはこれら4カ国から救助支援の申し出を受諾したと考えられる。その他、2020年12月の関係正常化を機に二国間関係を強化しているイスラエルもモロッコ支援に名乗り出ており、9月9日にはイスラエルのガラント国防相がモロッコのルーディイー首相付国防担当相との電話会談で、支援方針を直接伝えた。モロッコとしては、より多くの被災者の救出に向け、イスラエルにも助け舟を求めたいものの、パレスチナ情勢を考慮した場合、イスラエルとのあからさまな協力促進を躊躇せざるを得えない事情がある可能性が考えられる。

 

(主任研究員 高橋 雅英)

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