中東かわら版

№11 オマーン:日本企業とのLNG長期契約

 2024年4月16日、オマーン国営企業「オマーンLNG」は日本企業「JERA」と、2025年からの10年間にわたる液化天然ガス(LNG)売買契約を締結した。本契約は2022年12月調印の基本合意書に基づくものであり、年間80万トンのオマーン産LNGがJERAに供給される。

 オマーンLNGは昨年11月に英国企業「BP」と2026年から9年間の既存契約(年間供給量100万トン)を更新した他、今年3月にはドイツ国営会社「SEFE」と2026年から3年間の新規契約(年間供給量40万トン)を結ぶなど、ガス収入の維持・拡大を試みている。 

評価

 オマーンは日本にとって原油・天然ガスの輸入元の1つであり、財務省貿易統計によれば、日本の2023年のオマーン産LNG輸入量は総輸入量の3.3%(218万トン)を記録した。オマーンのLNG輸出基地があるカルハートは、ホルムズ海峡のインド洋側に位置する地理的優位性を持つため、中東情勢の緊迫化に伴ってホルムズ海峡が封鎖された場合でも、同海峡を迂回した資源輸出が可能である。日本の発電用LNG需要は、停止中の原発の再稼働や再生可能エネルギーの普及によって減少する見方が強まる一方、予期せぬ自然災害が原子力や再エネに及ぼす悪影響も考慮すれば、今後もガス火力発電を一定程度維持していくことが日本にとって重要である。この点を踏まえると、オマーンからのガス供給は、日本のエネルギー安定確保に寄与するものと言える。

 一方、オマーンがこの先、ガス輸出量を拡大できるのかが注目される。電力需要の高まりを受け、オマーンでは発電比率の9割を占めるガス火力発電用の消費量は2023年、前年比で13%増を記録した。また、原油の採収率を向上させるための油層への再圧入向けのガス消費も増加傾向にある。こうした中、オマーンはUAEと同様に、カタル産ガスを「ドルフィン・ガスパイプライン」経由で輸入して、国内市場に投入することで、輸出分のガスを確保している状況である。オマーンにとっての今後の課題は、国内の非随伴ガス生産量を増やしながらも、再エネ導入などを通じて、ガス火力に依存した現在の電源構成を多角化できるかである。

 

【参考】

「UAEのクリーンエネルギー政策と天然ガス産業の動向」『中東分析レポート』T23-13。※会員限定。

(主任研究員 高橋 雅英)

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