中東かわら版

№16 カタル:LNG船の建造プロジェクト、中国企業による大型船の造船受注

 2024年4月25日、カタル国営企業「カタルエナジー」は液化天然ガス(LNG)船の建造プロジェクトの進捗状況を発表した。同社はこれまで在来型LNG船(積載可能量が17.4万立法メートル)に関する長期定期傭船契約を11社と締結した。また、これら全てのLNG船は韓国企業3社と中国企業1社によって建造される予定である。企業別の造船受注数は、以下の表の通りである。

 

表 在来型LNG船(全104隻)の企業別の造船受注数

韓国企業「現代重工業」

34隻

韓国企業「サムスン重工業」

33隻

韓国企業「ハンファ・オーシャン」

25隻

中国企業「滬東中華造船」(中国船舶集団(CSSC)子会社)

12隻

(出所)カタルエナジーの発表をもとに筆者作成。

 

 加えて、カタルエナジーは4月29日に中国船舶集団(CSSC)と、世界最大級(27.1万立法メートル)のLNG船18隻の造船契約(60億ドル規模)に調印した。同契約により、CSSC子会社「滬東中華造船」が在来型12隻に加え、最大船型18隻の建造も手掛ける。そのうち、8隻が2028~2029年に、残りの10隻が2030~2031年に完成する見通しである。

 

評価

 カタルエナジーのLNG船の建造計画では、韓国企業による造船契約の受注が際立ち、在来型の大部分が韓国勢によって建造される。こうした中、カタルエナジーが最大船型の建造に向けて中国企業を選定したことは、カタルが中国との関係を重視している点を反映している。

 カタル・中国のエネルギー関係については、中国のLNG総輸入量におけるカタル産の割合は2023年に第2位の約23%を記録し(出所:中国海関総署)、中国の対カタル・ガス依存は年々強まっている。また、中国国営エネルギー企業2社がカタルのガス田拡張プロジェクトに参画し、「ノース・フィールド・イースト」事業で生産された年間800万トンのLNGを2026~2053年に、「ノース・フィールド・サウス」事業から年間300万トンを2027~2054年に購入する予定だ。

 今般、カタルが60億ドルに及ぶ最大船型の造船契約を中国企業と結んだ背景には、中国をカタルのガス産業に中長期的に関与させる狙いがあると考えられる。カタルは中国側に経済的利益を作り出すことで、その見返りとして、世界最大のLNG輸入国である中国での市場シェアの拡大に期待している。他方、カタルが推し進めるLNG増産計画(現在比プラス84%)では、中国による買い増しだけでは追加生産枠を埋められないと予想され、カタルは欧州や南西アジア、東南アジアでもLNGの販路を広げていく必要があるだろう。

 

【参考】

「カタル:新造LNG船の運航契約、韓国企業による造船受注」『中東かわら版』No.4。

(主任研究員 高橋 雅英)

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