中東かわら版

№22 カタル:エジプト沖合での資源権益を取得

 2024年5月12日、カタル国営企業「カタルエナジー」は米企業「エクソンモービル」との間で、エジプト北部沿岸の沖合探査鉱区2カ所の資源権益を取得する基本合意書に署名した。同合意に基づき(エジプト政府による承認を必要とする)、カタルエナジーが「カイロ」及び「マスリー」両鉱区の権益40%を取得し、開発の操業主体であるエクソンモービルが残りの60%を保有する予定である。

 エジプトでの資源権益について、カタルエナジーCEOを兼務するカアビー・エネルギー担当国務相は、エジプトにおけるカタルの存在感の向上につながる点を強調し、資源開発に向けてエジプト天然ガス公社(EGAS)やエジプト石油・鉱物資源省と協力していく姿勢を示した

 

評価

 カタル・エジプト関係は過去、イスラーム主義勢力への対応の違いなどを理由に対立し、2017年6月にはエジプトがアラブ首長国連邦(UAE)・サウジアラビア・バハレーンと共に、カタルと断交した経緯がある。その後、2021年1月の湾岸協力理事会(GCC)首脳会議の成果として出されたウラー宣言によって国交回復に合意し、両国は関係改善に向けて動き出した。以降、カタルは外貨不足に苦しむエジプトへの金融支援に乗り出したり、対エジプト投資額を増やしたりするなど、エジプトのシーシー政権を支えている。

 カタルエナジーによるエジプトでの資源事業への関与は、両国の協力関係を更に深化させる要素となるだろう。同社は2021年12月に英企業「シェル」から、エジプトの紅海沿岸の沖合鉱区2カ所の権益も獲得するなど、エジプトでの天然ガス開発事業に強い意欲を示してきた。カタルは豊富な資金力を持ち、自国内でガス開発経験を積んでいる点から、エジプトは資源開発に向けた資金調達や技術面でカタルの役割を期待していると考えられる。

 現在、カタルエナジーはカタル国内で液化天然ガス(LNG)増産計画を進めながら、世界各地の資源開発事業に積極的に参入している。エジプトの他、北米や中南米、アフリカ、キプロスで投資を行い、資源権益を取得した。特筆すべき事業として、カタルエナジーがエクソンモービルと手掛ける米国テキサス州のゴールデンパスLNG輸出プロジェクト(年間液化能力は最大1800万トン)では、生産された7割のLNGを引き取り、販売する予定である。今後、カタルは国際活動を通じて国外で輸出先を自由に変更できるLNG分を確保し利用することで、国際ガス市場での影響力を拡大させていくだろう。 

(主任研究員 高橋 雅英)

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