中東かわら版

№34 UAE:ルワイスLNGプロジェクトの最終投資決定

 2024年6月12日、ハーリド・ビン・ムハンマド・アブダビ執行評議会議長が主宰するアブダビ国営石油会社(ADNOC)取締役会において、ルワイスLNG(液化天然ガス)プロジェクトの最終投資決定(FID)が承認された。同事業では、960万トンの年間生産能力を擁するLNG生産施設がアブダビ首長国のルワイス工業都市に2028年までに新設される予定である。完成すれば、UAEの年間液化能力は、現在比の2倍以上の最大1560万トンに増加する見通しである。

 ADNOCはルワイスLNGプロジェクトの進展を受け、UAE企業「NMDCグループ」・フランス企業「テクニップ・エナジーズ」・日揮で構成される共同企業体と、55億ドル相当の設計・調達・建設(EPC)契約を締結した。

 

評価

 UAEはかねてよりガス収入の増加を目指し、LNG生産施設の新設計画を進めてきた。新設地は当初、UAE東部のフジャイラが選定されていたものの、ADNOCが昨年、建設地をフジャイラからルワイス工業都市に変更した。その理由は、アブダビにはクリーンエネルギーをより多く供給できる体制があるからだと考えられる。アブダビでの太陽光・原子力由来の電力がルワイスLNG生産施設の低炭素化に貢献することで、脱炭素化の流れの中でも、UAE産LNGが国際ガス市場で競争力を持てるメリットがある。LNGの販路先として、ADNOCはこれまでに中国企業「ENNナチュラル・ガス」やドイツ企業2社と、15年間のLNG売買契約を締結した。

 LNG輸出を増加させる上で、LNG生産施設の新設と同じく重要な課題は、輸出向けの天然ガス量を十分に確保できるかである。UAEはクリーンエネルギー政策に注力し、太陽光・原子力の導入を図ることで、天然ガスを発電用から輸出用に割り当てられる道筋を作った。一方、UAEはドルフィン・ガスパイプライン経由で輸入した割安のカタル産ガスを国内市場に投入することで、自国で生産されたガスの余剰分をLNG輸出にまわすことができている。カタル産の輸入量は、国内消費量の約3割に匹敵する。UAEが今後もカタル産ガスの輸入量を維持していくためには、カタルとのエネルギー協力関係の維持に努める必要があるだろう。

 

【参考】

「UAE:ドイツとのLNG長期契約」『中東かわら版』2023年度No.182。

(主任研究員 高橋 雅英)

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