中東かわら版

№37 バハレーン:イランとの国交回復協議に合意

 2024年6月23日、テヘランで開催されたアジア協力対話(ACD)に参加したザイヤーニー外相は、イランのバーゲリー・キャニー外相代行と会談した。そしてその後の共同声明では、二国間の外交関係の再開に向けた協議を進めること、その一環でバハレーン国内で凍結されているイラン資産の解除も進めることで合意がなされたと発表された。ただし協議や資産凍結解除の時期については明示されなかった。

 

評価

 先立つ2024年5月23日、ハマド国王はロシアのプーチン大統領とモスクワで会談し、イランとの外交関係の再開に意欲的である旨を伝えていた。並行してザイヤーニー外相はヘリ墜落事故で死亡したライーシー大統領、アブドゥルラヒヤーン外相の弔問でテヘランを訪れていた。今次合意はこうしたプロセスを経てなされたものである。

 バハレーンは2016年1月、サウジアラビアに続く形でイランとの国交を断絶した。しかしサウジアラビアとイランが2023年3月に国交回復に合意し、これを受けてイランはバハレーンとの国交回復合意への期待も表明した。

 但しバハレーンとしては、「アラブの春」の際に国民の過半数であるシーア派市民をイランが扇動したとの警戒、第5艦隊司令部を擁する湾岸における米国の軍事パートナー、2020年9月のアブラハム合意を経たイスラエルとの国交樹立といった、サウジアラビアとは異なるイランに対しての様々な思惑、立場がある。これに2023年10月以降のガザ戦争が重なったことで、バハレーン・イラン間の国交回復への議論は進まなかったのだと考えられる。この点、今後のバハレーンとイランの国交回復プロセスは、サウジアラビア・イラン間の場合よりも外部要因の影響を受ける可能性がある。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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