中東情報分析

イスラーム過激派モニター(会員限定)

『イスラム過激派モニター』は、「イスラーム国」やアル=カーイダ等のイスラーム過激派諸派に関して、これまで「中東かわら版」を通じて発行していた内容により詳細な分析を加えたレポートです。

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2021/08
No.M21-07 2021年7号 ターリバーンのアフガニスタン制圧とイスラーム過激派全体への影響に関する考察  8月15日、ターリバーンが首都カーブルの大統領府を占領し、アフガニスタン・イスラーム共和国が崩壊した。アフガニスタンのほぼ全土が再びイスラーム過激派・ターリバーンの支配下に置かれたことを受け、国際社会では同国が「テロの温床」になるのではという懸念が広がっている。テロの温床になるとは、この場合、ターリバーンがアフガニスタンを支配することによって同国内でテロ活動が活発化するという懸念を意味すると思われる。これに加えて、ターリバーンのアフガニスタン制圧を受けてアフガン国外でイスラーム過激派諸派がテロ活動を増加させるか否かという点も考察すべきだろう。したがって本稿は上記2点について、イスラーム過激派全体の動向を踏まえて分析する。ただし、アフガニスタン情勢は急速に変化しているため、本稿執筆時点での事実にもとづく分析であることには留意を要する。

1.イスラーム過激派諸派の反応:AQ系組織は称賛、ISは批判
2.ターリバーンのアフガニスタン制圧によるイスラーム過激派諸派への影響
3.おわりに
2021/08
No.M21-06 2021年6号 「イスラーム国」過去1年間の戦果 「イスラーム国」(IS)はオンライン週刊誌『ナバウ』299号(2021年8月12日付)で、過去1年間の戦果を報告した。本稿ではその内容をもとに、地域別の、また過去と比べた同派の動向について確認する。
2021/08
No.M21-05 2021年5号 州都制圧後のターリバーン アフガニスタンでは、米軍撤収(8月31日期限)と並行してターリバーンが支配地域を拡大し、8月13日時点で全34州の内13の州都を制圧する等、その猛攻ぶりが注目を集めている。これに伴い、制圧地域の一部ではターリバーンが女性に外出禁止やヒジャーブ着用義務を課す等、1990年代の同派の政権時代を思い起こさせる統治を再開したと報じられる。一方、ターリバーン側は州都制圧後の統治について――同派の自己正当化にとっては不可欠な要素であるにもかかわらず――一切説明していない。この齟齬をどう捉えればよいのかについて考えたい。
2021/08
No.M21-04 2021年4号 イラク国内の電力不足を誇る「イスラーム国」 2020年末より、イラクでは「イスラーム国」(IS;イラク州)が「経済戦争」と称して、主な活動範囲であるディヤーラー、サラーフッディーン、キルクークの三県で送電塔の破壊を続けてきた。そしてこの成果とばかりに、2021年8月3日に『電力枯渇』と題した映像を配信し、国内の電力不足に対応できていないカージミー政権の失政をはやし立てた。ただし、これをもってイラクでの同組織の巻き返しに結びつけるのは、やや早計だろう。
2021/06
No.M21-03 2021年3号 サヘル地域のイスラーム過激派:フランスのバルカン作戦終了発表への反応  2021年6月10日、フランスのマクロン大統領はサヘル地域でのイスラーム過激派掃討作戦「バルカン」の終了を発表した。これを受け、「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」(AQIM)の指導者ユースフ・アンナービーは6月20日に演説を発表し、同作戦終了の発表に関する反応を示した。本稿では、バルカン作戦終了の背景や同作戦終了の発表に対する過激派の反応を考察し、サヘル地域の過激派の動向を含む今後の展望を検討する。

【目次】
1. サヘル地域における軍事作戦とバルカン作戦終了の背景
2. バルカン作戦終了の発表に対する過激派の反応
3. 今後の展望
2021/05
No.M21-02 2021年2号 ヒジュラ暦1442年のラマダーン月と過激派 4月13日に始まったヒジュラ暦1442年のラマダーン月が、各国概ね5月12日に終わりを迎えた。ラマダーン月に関しては、ムスリム(イスラーム教徒)にとって聖なる月であり、同期間に行った善行は通常の数倍から十倍の功徳があるとの理解から、過激派の武装活動(彼らにとっての善行)が活発化するという言説が根強く見られる。一方、近年ではラマダーン月に乗じた広報活動が目立たず、逆にラマダーン月を通して過激諸派の停滞ぶりが露呈する場合も少なくない。これを念頭に、今期のラマダーン月における動向を確認する。
2021/04
No.M21-01 2021年1号 犯行声明から見るイラク・シーア派民兵の動向 現在、イラク政府は「イスラーム国」(IS)による被害からの復興を重要課題の一つに掲げている。3月上旬のヤジーディー教徒生存者法 の議会での可決や、ローマ教皇フランシスコのイラク訪問は、ポストIS期のムードを国内に醸成する出来事として報じられ、実際にISによる活動は停滞していると言ってよい。一方、この隙間を縫うように「シーア派民兵」と総称される勢力の活動についての報道が目立つ。本稿では、最近のシーア派民兵の動向を犯行声明から素描し、その特徴や影響について検討する。
2021/03
No.M20-18 2020年18号 モザンビークのイスラーム過激派:ガス田サイト近郊の町への攻撃 2021年3月24日、モザンビーク北部のカーボ・デルガード州でイスラーム過激派がガス田サイト近郊の町を攻撃した。同攻撃により、イギリス人1名を含む数十人の死者が発生したとの報道がある。「シャバーブ」と呼ばれる同州の過激派は、「イスラーム国中央アフリカ州名義」で活動しており 、3月29日に攻撃を主張する犯行声明を発出した。今年1月1日にはガス田サイトへの進攻を試みるなど、シャバーブは外国企業にとっても大きな脅威となっている。
本稿では、まず中央アフリカ州の犯行声明やアアマーク通信発信の戦闘員に関する動画を概観する。次に、ガス田サイトへの直接攻撃の可能性を含む今後の展望を検討する。
2021/02
No.M20-17 2020年17号 モザンビークのイスラーム過激派:地域的拡大とガス田サイト攻撃への懸念  モザンビーク北部のカーボ・デルガード州では2017年10月以降、イスラーム過激派による攻撃が多発しています。2020年夏以降の動向としては、2020年10月にタンザニア南部への越境攻撃が発生し、また今年1月には同州北東部のガス田サイト近郊の村への襲撃も発生しました。本稿では「シャバーブ」と呼ばれるイスラーム過激派に関する組織概要や活動地域を整理し、過激派の地域的拡大とガス田サイト攻撃の可能性を検討します。

【目次】
1.「シャバーブ」と呼ばれるイスラーム過激派
2. タンザニアへの越境攻撃とガス田サイトを狙った進攻
3. 今後の展望
2020/11
No.M20-16 2020年16号 AQIM新指導者の選出  2020年11月21日、「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」(AQIM)はアンダルス広報製作機構を通じて演説を発表し、ユースフ・アンナービーがAQIM新指導者に選出された点に言及しました。本稿では、新指導者の経歴や今後の展望について考察します。

【目次】
1. 演説の要旨
2. AQIM新指導者のユースフ・アンナービー
3. 今後の展望
2020/11
No.M20-15 2020年15号 ウィーンでの銃撃事件について「イスラーム国」が犯行声明を発表 2020年11月2日にオーストリアの首都ウィーンで起きた銃撃事件について、同3日付で「イスラーム国」が犯行声明と思しき文章を発信した。犯行声明の発信方法などから、今回の犯行声明が意味することを分析します。
2020/10
No.M20-14 2020年14号 「イスラーム国」公式報道官 アブー・ハムザ・クラシーの音声演説 「イスラーム国」のアブー・ハムザ・クラシー公式報道官が音声演説を発表しました。演説において、イスラエルとUAE・バハレーンの国交正常化を支持したとしてサウジアラビアに対する攻撃を扇動する箇所がありました。本稿はこの攻撃扇動の内容を分析するものです。

【目次】
1.要旨
2.サウジアラビアに対する攻撃扇動の評価
2020/10
No.M20-13 2020年13号 マリの囚人解放に関するJNIMの声明  2020年10月14日、「イスラームとムスリム支援団(JNIM)」はマリの囚人解放に関する声明を公式広報機関「ザッラーカ機構」を通じて発表した。この背景として、マリ政府が10月4日にイスラーム過激派の囚人約200人を釈放したのを受け、JNIMは10月8日に拘束中の外国人やマリ人の人質らを解放したことがある。一方、今般の囚人解放に関して、JNIMのザッラーカ機構以外の発信主体も声明を発出したことで、公式広報機関と非公式広報機関が互いに対立する側面が確認された。
 本稿では、まずJNIMの10月14日付け声明内容を概観する。次に、囚人解放の声明をめぐる各発信主体間の対立からJNIMの内部争いを考察する。最後に、釈放された過激派戦闘員のJNIM再合流が、サヘル地域の治安情勢に及ぼす影響を検討する。

【目次】
1. JNIMの声明内容
2. 囚人解放の声明をめぐる発信主体間の対立
3. 囚人解放による治安上の懸念
2020/10
No.M20-12 2020年12号 アル=カーイダによる外国権益への警告 2020年10月14日、アル=カーイダはペルシャ湾岸アラブ諸国とイスラエルとの国交正常化に関する声明を以下概要の通り発出し、外国権益への攻撃を示唆した。
2020/09
No.M20-11 2020年11号 作戦・戦果数から見る「イスラーム国」の趨勢 「イスラーム国」は2015年以来、中央広報局を通してオンライン週刊誌『ナバウ』を発行し続けている(2020年9月16日時点で通算251号)。同誌では定期的に、各地域(同組織が命名する「州」)で実施された軍事作戦と、これによる戦果(殺傷した敵勢力や破壊した車両等の数)が掲載されている。本稿では、3年前から掲載されている各州の年間の戦果報告(「イスラーム国」の自己申告)を頼りに、同組織の地域ごとの活動の伸長を読み解く。
2020/09
No.M20-10 2020年10号 アルジェリアとチュニジアにおけるイスラーム過激派の動向  2020年6月3日、「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」(AQIM)指導者がマリ北部でフランス軍によって殺害された。その後、AQIMは6月18日に指導者の死亡を認める旨の弔辞声明を発出したが、現在まで新指導者任命に関する発表はない。AQIMが次期指導者の任命に時間を要している背景には、AQIMがアルジェリアとチュニジアで組織崩壊の危機に直面している事情があると考えられる。一方、両国ではいまだイスラーム過激派による攻撃が散発し、周辺諸国も不安定な情勢が続いている。
 本稿では、まずアルジェリアとチュニジアでAQIMが衰退した要因を考察する。次に、AQIM以外のイスラーム過激派の動向を整理する。最後に、周辺諸国の不安定化が両国の治安情勢に及ぼす影響を検討する。


【目次】
1. AQIMの衰退
2. AQIM以外のイスラーム過激派の動向
3. 今後の展望
2020/08
No.M20-09 2020年9号 イスラエル・UAEの国交正常化への反応  2020年8月13日、イスラエル・UAE・米国は、イスラエル・UAEの国交正常化合意を発表した。またこれに伴って、イスラエルが進めていたとされるヨルダン川西岸地区併合計画の停止が発表された。これらについて、UAEはパレスチナのために西岸併合を阻止したことを強調し、仲介役を自負する米国は中東和平問題の解決に資する「歴史的成果」と伝える等、それぞれが地域の安定に向けた自国の貢献をアピールした。またイスラエルは、これを皮切りに他のアラブ諸国との関係構築に意欲的な姿勢を見せている。この動きに対して、イスラーム過激派は何らかの反応を見せているのか。
2020/08
No.M20-08 2020年8号 「イスラーム国」と犠牲祭  イスラーム諸国は2020年7月30日夜、犠牲祭(イード・アドハー)を迎えた。犠牲祭は、ラマダーン月明けの祭り(イード・フィトル)と並ぶイスラーム暦の祭日で、イブラーヒーム(アブラハム)が息子イスマーイール(イシュマエル)を神に捧げようとしたことにちなみ、供儀として家庭で羊や山羊を屠殺し、これを近隣住人や貧者に分け与えること等が慣例となっている。また犠牲祭から4日間は多くのイスラーム諸国で休日となり、買い物客や旅行客によって都市や観光地が賑わいを見せるのが通常である。
 一方、イスラーム過激諸派にとって、こうした宗教的背景を伴う出来事は信仰心の発露を大義名分とする武装行動の好機ともなってきた。ただし、「平時よりも多くの功徳が宗教実践によってもたらされる」と言われるラマダーン月と比べ、犠牲祭にはこれにあわせて武装行動に勤しむべきだと人々を思い至らせる教義的な根拠に乏しい。このため、犠牲祭に際しての過激諸派による武装行動の動機付けは必ずしも一様でなく、しばしば曖昧である。本稿では過激諸派、とりわけ「イスラーム国」が犠牲祭をどのような機会と位置づけてきたのかについて、過去10年間の声明を通して同派の盛衰とともに検討したい。
2020/08
No.M20-07 2020年7号 「イスラーム国」によるアフガニスタン刑務所襲撃の声明 2020年8月2日から3日にかけて、アフガニスタン東部のナンガルハール州ジャララバード市にある中央刑務所が武装集団による襲撃を受けた。本稿執筆時点で死者29名以上、脱走者は約270名とされる。これに関して「イスラーム国ホラーサーン州」は3日、公式な声明(テキスト)を発表した。声明では、1名が自動車爆弾による自爆攻撃で刑務所の検問所を破壊し、特攻部隊が警備員と交戦した後、別部隊が迫撃砲で後方支援して刑務所を破壊し、受刑者を逃亡させたことが説明される。死者数に関しては、一般報道と異なり、声明でアフガニスタン兵士・警官約100名を殺害したと述べられる。さらに翌5日、「ホラーサーン州」は襲撃実行前の実行犯の写真を配信した。
2020/07
No.M20-06 2020年6号 イドリブ県のイスラーム過激派諸派と外国勢力――トルキスタン・イスラーム党について―― 2020年6月下旬、イドリブ県を占拠するイスラーム過激派諸派の間で抗争が発生した。抗争自体は、シリアにおけるアル=カーイダの一派である「シャーム解放機構(旧称:ヌスラ戦線)」と、同派とアル=カーイダとの「分離」を良しとせずに発足した「宗教擁護者機構」という、いずれもアル=カーイダに連なる団体との間の権益争いだった。「シャーム解放機構」が「宗教擁護者機構」などからなる連合体に勝利していったんは沈静化した模様であるが、この抗争を通じて明らかになった重要な問題は、イドリブ県を占拠するイスラーム過激派の中に、外国起源の個人や集団が非常に多いということだった。


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